数年前の事、初めて見た彼の洋服には押し花がしつらえてありました。
『花が好きなんですよね、僕。』
綺麗な一輪が背中に凛と佇んでいました。
それから幾年、彼は山村の片隅で服を作っています。
『野山には綺麗な花が沢山あるんです。雑草って云われる様な草木にも目を奪う美しさがあるんです。』
『四季の香りが凄くはっきり分かるんです。もちろん視覚から得られる変化も街よりずっと。』
“物事に敏感で居たい”という形容をする人とは出会った事があるし、実際自分も鈍感にはなりたくないと思っている性分でした。
ただ、彼は少し違うんですよね。
“敏感かどうか”ではなく、そもそもそういった事を意識してなくても当たり前にそういった物事に目や手足が伸びる人種。
これって凄い才能だと思います。
『四季折々の草花で染めた生地を縫いたい。』
『人々の生活に寄り添い、生業と共に歩んでいく行く服を作りたい。』
彼の服を纏う村民の人々の顔には日常の中に浮かぶ一縷の温かさがしっかりと留まって映ります。
あゝ、そうか。
だからこんなに優しいのか。
こんなに角の柔らかい光景を僕は初めて衣服を介して目の当たりにしました。
光を浴びて染める日。
野山と共に待つ日。
丹念を迎え入れる日。
帰りし者を暖める為に費やす日。
歩みを進める日。
整える日。
当たり前を慈しむ日々。
彼は山村の片隅で服を作っています。
綺麗な一輪は眼前に佇んでいます。
i a i 個展『山村にひかり』
10/24(土)~11/1(日) @フーリゴギャラリースペース
※10/24,25、11/1の3日間は作家も在廊制作をしながら皆様のご来店をお待ちしております。
※どの作品も1点物の御召し物となります。永く着る中でのアフターケア(ほつれ直しや丈直し等)も致しますので、ご自分の色に染めながら愛でて頂ければと思います。
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窪田
■大切なお知らせ■
Fuligoは2015年3月より金曜定休となっております。お間違えの無いようご来店下さいませ。