『Under Construction 』
工事現場が好きだ。
ぼくはいま東京の、神田と秋葉原のあいだらへんに住んでいるのだけれど、この辺りは本当に工事現場が多い。
解体、修繕、新築、道路、、、毎日どこかしらで何かしらの工事をしていて、
家からアトリエまでの徒歩10分の距離を歩くだけで、沢山の工事現場に遭遇する。
腰からぶら下げた工具入れをガシャガシャ鳴らしながら歩く土方のにいちゃん達。
住めるんじゃないかってくらい大きな荷台に大量の資材を積んだトラックの行列。
あっという間に足場が組まれて灰色のシートに覆われるビル。
ビルの屋上に組まれたクレーンから吊るされて宙に浮かぶフレコンバッグ。
雨後の筍のように次々とそびえ立っていくビルやマンション。
夜の道路にぽっかりと空いた白い穴のような、工事現場の投光器の光。
この街全体が大きな工事現場なんじゃないかと思うくらい工事現場だらけで、それをワクワクしながら眺めている。
工事現場を、特に巨大な現場を見るたびに、これはもう大自然だよなぁ、とか思ったりする。
もちろんビルや街は自然に生えるものではなくて人工物なんだけど
(そもそも東京でここ最近工事が多いのは東京オリンピックのためで、経済という概念は強固に純粋な人工物だ)
それでもぼくにはどうしても、ビルが、街が、作り物だと思えない。
例えば蟻塚は自然物だろうか。
あれは自然に出来たもの?それとも蟻が作った蟻工物?
蟻には作為がある?それとも作為なき自然の奇跡?
植物の根っこのおよそ半分は、実は植物の細胞ではなく細菌で出来ているそうだ。
彼らは共生している。
都市と人も、共生しているんじゃないだろうか。
我々が都市を作っているのではなく、都市が我々に作らせているんじゃないのか。
形は形よりも以前にすでにあって、現実はそれをなぞっているだけなんじゃないだろうか。
自然と人工の境界線なんて、雲みたいな曖昧なものでしかないんじゃないだろうか。
そんな取り留めのない考えと、目の前で繰り広げられる光景が、ぐちゃぐちゃに混ざり合って不思議な感覚に陥る。
工事現場が一つの巨大な演劇の舞台のように見えてくる。
昔どこかで見た、音のない白黒映画のような。
どこまでが意味ある事でどこからが無意味なんだろうか。
ぼくには分からない。
灰色だ。
人間のやる事は白か黒かで判断できる事なんてほぼなくて、大体いつも灰色だ。
ぼくは、そんなどっちつかずの灰色が好きだ。
そんな灰色のイメージが重なるからだろうか。
工事現場をとても美しく感じてしまう自分がいて、その美しさがぼくの手を動かしてくれる。
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カバン作家KAGARI YUSUKEの新作受注会、本年もギャラリースペースにて開催致します。
防火シートや塗装シートを用いたアイテムから新作となるミニウォレットやキーケース、ベルト等、先日ローンチされたばかりの新作をフルラインナップでご用意。
従来の「街」という「面」からアイディアの拡大率を上げ、その中に点在する「工事現場」という「点」に焦点を当てた今コレクション。
ウィットに富んだ作品が多数並びます。
どうぞお手に取ってご覧下さい。
また、今会期は初めての試みとして、Fuligoが入るビルの地下1階スペースを展示会期限定でお借りしました。
こちらを入場無料のフリースペースとし、KAGARI YUSUKEのアートピース的な制作物を中心に展示する予定です。
剝き出しのコンクリートと配管、日中に転がり込むもったりとした光が彼の世界観とマッチするのではないかと思います。
こちらも是非お楽しみに。
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KAGARI YUSUKE 個展 『Under Construction』
会期:6/16(土)→7/1(日)
場所:Fuligo ギャラリースペース
定休日:毎週金曜日
作家在廊日:6/16(土)
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窪田
アクセス:
矢場町駅1番出口から徒歩5分
栄12番出口から徒歩10分
毎週金曜定休