7/30(日)迄の会期にて、ギャラリースペースで個展『追憶のアトリエ』を開催中のyuka ishikawa。
展示会場には今会期に合わせてアーティストであるY.D(夢中夢)にオリジナルで制作頂いた楽曲「Le Reflet(ル・ラァフレェイ)」が背景として滲みます。
こちらのCDは数量限定となりますが、会場に足をお運び頂いた方々にお持ち帰り頂く事が可能です。
しかし販売はしておらず、記憶と記憶の等価交換として、お手持ちの品何かしらとの物々交換でのお渡しとなっています。(金品以外に限ります)
静かに鼓動する音色、そこに込められた祈りの様なものを下記の通り作家自身の言葉(原文)まま掲載させて頂きます。
今回は「記憶」がテーマでの作曲となりますが、テーマと共に追憶のアトリエ自体にはっきりとしたコンセプトがあるので私なりにそれを意識し、寄り添った楽曲となっています。
非常にシンプルな曲ですがとても気に入ってます。
タイトルの由来はフランス語で反射光を意味しますが、闇の中で照らされた光の周りが浮かび上がるように忘却に沈んでしまった記憶の想起をイメージしています。
人が死から逃れられないよう、誰もが忘却から逃れることはできません。
このアトリエの少女も、そして我々もまた、程度の差はあれ、忘却の病を患っていると考えています。
ただ、人は不思議なもので、全く忘れていたものを極めて個人的なきっかけで突然思い出すこともあると思います。
その想起は時に、美しい幻視、恍惚を伴います。
さらに他者の記憶がこもる何かに触れたときに、実際の個人的体験に関わらず、個人の経験を超えた郷愁を呼び起こすことだってあります。
この楽曲も、そしておそらくは追憶のアトリエ自体も会期の期間のみに存在を許された空間ではなく、おそらくは、それがいつか記憶から薄れた時にあるきっかけでその光景を思い出されることで過去と想起の二つの時間が、互いの時間を超えて結合し、これから先も追憶のアトリエが現れるだろうと想定しています。
この音楽自体も、音楽の中で鳴らされるベルも、実際のフーリゴのベルの音が鳴るだろう会期中も、会期を終えた未来での想起も、時間と空間を超えた共鳴がいつか起きると。
コンセプトの中の忘却の病の少女のアトリエ、会期中の「追憶のアトリエ」、いつか想起されるだろうこれらの記憶、来場者さまが観賞した空間、それぞれの人生、空間演出はもちろん、様々な空間が一つになって立ち現れる想起を導く装置の一つとしてお役に立てる音楽になっていれば幸いです。
表ジャケットについては、いしかわさんの展示イメージであるセピアを採用しています。
部屋、壁に当たる光は忘却からの想起のメタファーです。
またそれら自体も忘却から浮かび上がるかのようにデザインしています。
プルーストを引用するなら「いつかまた暗い夜の中から現れるのだろうか?」という文を添えるイメージです。
セピアは紅茶で染められています。
裏ジャケットについては紅茶とプチットマドレーヌの写真を加工して載せています。
これはプルーストの小説「失われた時を求めて」のマドレーヌと紅茶を口にして突然昔の記憶が蘇る有名なシーンが元ネタです。
文学の世界では想起の象徴と呼んでも過言ではないと思います。
楽曲はプルーストのオマージュというわけではありませんが、この想起の方法は芸術や人生を限定しないという点で、知っている人にはこの作品が期待する効果を注釈する効果があると考えました。
実際の展示風景と共に、五体でご堪能頂ければと思います。
どうぞよしなに。
アクセス:
矢場町駅1番出口から徒歩5分
栄12番出口から徒歩10分