「不満」ってなんなのか。
満たされていない事、あきたりない事。
「不安」てなんなのか。
心が落ち着かない、安らげない状態の事。
ならば、
満足なら安心なのか。
安心なら満足なのか。
ここら辺ってとても曖昧で、一人脳内サミットを幾ら進めても、何度開催しても、結局不毛に終始します。
「そもそも秤が違う」
「そんな所は然程掘り下げないでもいい」
「満ち引きは奥行きで不平不満は深さの話」
「なんでもよくない?」
『各々の価値観による』
そう言ってしまえばそれに尽きる訳だし、毎回サミットはそういった議長の総括・号令によって散会されます。
お店の事を考える時、この集会は決まって開催されます。
なんなら、何気ない日々の生活を考える時も。
はっ、と気が付けば広大なグレーゾーンに腰掛けている。
結局根っ子は一つしかないんだな、とその度痛感します。
入り口を何処にしようと、出口を何処にしようと、通る道は大きく変わらないなぁと。
この御店に立つ前、僕は7年間保育士をしていました。
「動物は死ぬとかわいそうなのに、なんで蚊はつぶしちゃうの?」と子どもに聞かれた事があります。
中々深くて難しいお題です。
僕は、なんでだろうね?と答えました。
一緒に考えよう、と。
これで良かったと思っています。
結論を見つける事も大切ですが、一緒に考えていく事の方が重要だし、人の数だけ正解があるって事実を何となくでも先ず感じる、時間をかけて理解する事の方が尊いと思うので。
交える思考は大切だけど、押し付けるセオリーは可動域を抑え込んでしまいます。
転ばない方法ではなく、転び方を教える事こそが処世術。
(転び方が分かれば自ずと転ばない方法にも気付くという副産物が生まれる。そこに気付かない場合は必要に応じて援助していく)
そんな感覚でしょうか。
勿論、異論は認めますが。
このお店はなるべく曖昧でいたいと思っています。
少なくとも僕がここに立っている間は。
作品のセレクトや方向性も含めて。
「こうだ!」と決められた場所でなく「どうなのかな?」と一人一人が思考を巡らせられる場所。
自分が行きたい方角を様々な要素に触れながら悩める場所。
白黒つかないグレーゾーンの真ん中、色んな価値観(お店で言えばデザインや造形・背景)が一堂に会するプラットフォームみたいな。
多様性を認めた上で存在できる森みたいな。
中華!イタリアン!フレンチ!みたいな分かり易いカテゴライズよりもっとアバウトに、
多くの趣向をバイキング形式で楽しめるレストランみたいな。
安心して眠れる布団が常に満足な睡眠を与えてくれるものではないし、
満足な睡眠が安心できる日常を約束してくれる訳でもないし。
ただ満足も安心も持ちつ持たれつで成立していて、考え続ける事こそが重要なんだと思います。
「不毛だけれど畑は肥える」
今後もきっとサミットは続きます。
考え続けられるお店、考え続けられる人でいたいものです。
時間をかけて、なるべく穏やかに。
そう居れる内は伸びしろ無限な気がしますし。
うん、グレーってとっても素敵な色です。
一番人間的な気がして。
窪田
アクセス:
矢場町駅1番出口から徒歩5分
栄12番出口から徒歩10分